間もなくふもとの停留所にバスは着き、私たちは歩き出した。
何となく二人で会話をしたけれど、お互い歩くことに集中していた。
鋪装されていないぼこぼこした道を歩いていたが、やがて草が生い茂った低い丘のような場所にたどり着いた。この丘を越えると、例の開発途中のショッピングモールにつくらしい。
生い茂った草は、想像していた背の高い葦とまではいかないが、ごうごうと風になびいていて如何にも冒険の始まりといったイメージ通りだった。
丘の一番高いところに行くと港町と海が一望できた。
さすがに私も何か言いたくなって、
「冒険の道のりって感じですね」といったら、
「ええ、しかもすごい風ですね」と長い髪を草と同じくらいに風になびかせたホソミさんが言った。
「髪、縛ってくればよかったです。家では一つにまとめていたので、なんだか開放したくて」
と言いながら困ったように遠くの海を眺めていたが、私には髪の長い勇者が勇ましく立っているようにみえた。
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