2020年3月18日水曜日

空のルアー①


今日はお店に面白いおじいさんがやってきた。
カランコロンと威勢よくドアベルを鳴らして入ってきて開口一番、
「いやあ、下から見るとこの山は小さく見えるが、ここまで登るとくたびれるな」と、大きな声で笑った。
私とかめ君は急なことに驚いて、「は、はい」などという返事しかできなかった。
こういう時に私たちはいつもおよそ店員らしからぬ対応をしてばかりだと、後になってから後悔し反省する。多分二人とも急な出来事に弱いのだ。

「なにかお探しのものがございますか」店内をうろうろするおじいさんに、かめくんは気を取り直すかのように聞いた。

「ははは、いや、まあ無いよな。あるわけないもんなここに。まあいいんだ、いいんだ。」とおじいさんは言ったので、
「ええと、何をお探し何でしょう」
と私は少しだけムキになっていた気がする。

「うん?つまりあれだ、ほれ」
といっておじいさんは、背中にしょっていた細いリュックのようなケースを開けて、組み立て式の釣り竿を見せた。

赤褐色の木目の美しい木でできた竿が艶やかに光っていて、可愛らしい魚のロゴマークのようなものも描かれている。
私たちはその美しい竿に一瞬で虜になって
「わあ」などと言った。

「これの、餌を欲しくてな。疑似餌、ルアー、メタルジグ何て言ったらわかるかい」
おじいさんは、その美しい竿を慈しむように言った。
それを聞いて戸惑う私たちにおじいさんは続けた。
「いや、実はここの隣のそらまめ工具店?が先に目に入って釣り具はないもんかと探していたんだが、工具店だからまあ無いよな、で次に隣の君らの店が気になって、そこの商品が見える窓からキラキラしたもんが目に入ったものだから」

つまり、おじいさんは外から見えるショーウインドーのシルバーアクセサリーの事を言っているんだと思う。











2020年2月13日木曜日

わかめの日あとがき


今日のwakameダイアリーは、「わかめの日」のあとがきのようなものを書こうかなと思います。

あとがきと言っても、もともとメモ書きのような気楽な気持ちで書いていたんですが、
気が付けばほぼ3年くらいかけて書いてしまいました。

この話はもともと私がわかめや昆布などの海藻が好きで、わかめのデザインの指輪を実際に作った時に思い付いた話です。

登場人物の「イサトさん」は頭の中で男の人になったり、女の人になったりしたんですが、とにかく暗い過去を持った人という感じでした。

話の中でその暗い過去とは何なのか書いてみたかったのですが、何となく書かないで話は終わってしまいました。後々番外編のような感じで、イサトさんの日記を書いてみようかな・・・(多分すごく暗いと思うけど)。

とにかく一番鮮明に思い描いたのは、そんな暗い空気を空に向かってわかめのように手を伸ばしたわーちゃんが吹き飛ばす終わりの場面のイメージでした。
日記に挿絵のような形で場面の絵を載せているのですが、この空に向かって手を伸ばすわーちゃんを元気なイメージにしたかったから、思わず半袖にしちゃいましたが、季節的にわかめの養殖がまだ育ち切っていないという設定なので、寒い季節と自分で設定していたのを忘れていました・・・

そんな感じで、あくまでメモ書きみたいな感じですが、書き終えて頭がすっきりしました。また違う話もたくさん書いていくと思います。

※後から調べなおしたら、わかめの採取する時期は2月頃から始まり、5月頃に最盛期を迎え真夏は休眠期とありましたので、この挿絵もあまり違和感がないのかなと思いました。
本をみて調べたつもりだったのですが、完全に勘違いしていました。話の中の季節が少し間違っていると思います。