「リリリリリリン♪」
miluzdopの店内にあるパソコンから、軽やかな音でメールのお知らせベルが鳴った。
この独特のタイミング、絶対ホソミさんだと思いメールを開くと、やっぱりそうだった。
ホソミさんはこのポプラ通りにある古本屋の奥さんで、ちなみにホソミは名前ではなく苗字なのだが、私はもうこれを奥さんの名前のように捉えて使ってしまっている。夫婦で営む古本屋は、私たちの店と同じ通り沿いにあるものの、海の見える側とは反対の最端に位置しており、miluzdopとは少し距離がある。
ホソミさん夫婦がこの通りに店を構えたのは今から2年ほど前で、私たちより少し後だった。その際に挨拶に来られた時、ホソミさんが店のドアを開けて入ってこられた様子が、なぜか深く印象に残っている。
伺うようにゆっくりと顔を出し、そして滑らかに開ける仕草。その様子がどこか襖を開ける姿を連想させたのだ。
ホソミさんのたまに見せてくれる笑顔はとっても良い。人に安心感を与える笑顔だと思う。それからホソミさんはとってもマイペースだ。マイペースなのに人に気を遣う。そのギャップが私のホソミさんに対するおおまかな印象だ。
店に来る前には必ず「これから伺います」といった連絡のメールをくれる。頻繁に来るわけではないが、来店時には日常のたわいない話や古本にまつわる話を聞かせてくれるのがいつもの流れだ。
そしていつも後から「迷惑じゃなかったかな?」と困ったような笑顔で聞いてくる。それがなんともホソミさんらしい。
私は「全然」と笑顔で首を振り、ホソミさんはふんふんと納得した様子を見せる。この小さなやりとりが、なんだか私には心地よいルーティンとなっているのだ。もちろん、ホソミさんからのメールも含めて。