2019年4月27日土曜日

わかめの日㉑


「すみません。勝手に、綺麗な表紙で海藻か何かの本だと思って」
「ああ、気にしないで大丈夫だよ、確かに表紙のケルプか何かかな?海藻のデザインが綺麗でしょ、一昔前はそういった重厚な表紙の日記帳が結構売られていたんだけれど、今は機能性かな?あまり見られないね。」
「すみません」
かめくんがいうと微笑んでいたイサトさんは笑って
「いや、本当に気にしないで、むしろそんなの読んでくれても構わないよ。読んで後悔しないのなら、暗い内容だよ」と茶化す様に言った。
「え、いや、そんな・・・」

・・・なんてかめくんは困ったそぶりを見せていたけど、私にはわかる、かめくんは読みたいのだ。一度誰かに興味を持つと、その心の中も覗いてみたくなる、それを誰かにいいふらすなんてことは決してしないけど、とにかく知りたくなるのだ。

私はニヤリと静かに笑って、一人でアトリエを出て元にいた部屋に戻った。